本文へスキップ

ゲームライフ・ゲーム

亜麻矢幹のエンタメコンテンツ

#001 マリオの元カノ - ポリーン -
【任天堂/マリオシリーズ】


 マリオといえば――トライアスロンよろしく水泳と全力ダッシュとジャンプを繰り返す、メタボ気味の年齢不詳のヒゲのおっさんと相場は決まっている。
 それが日本のみならず、世界共通の認識でもある。
 で、そんなマリオにステディはいるの? と聞かれると「ピーチ姫?」って答える人がそれなりにいるだろうと予想される。
 そりゃ、あれだけの大冒険をして救出したのだ、何かしらの愛のパワーがあるに違いない……そのひたむきさが人々の心に響いて『スーパーマリオブラザーズ』は世界的大ヒットとなったのは疑いない。そんな感じもする。

 しかしである。
 なんだかんだいって、ピーチ姫はただ誘拐されただけの王女にすぎない。
 当人同士がどう思っているのかはわからないが、とにかく、恋人同士であると明言はされていない。
 たぶん。たぶんだけど。
 何しろ、相手は姫。
 マリオは超人的な体力と精神力の持ち主とはいえ、単なる一般人。
 普通に考えれば、釣り合いを取るのは難しい。
 当人同士の問題だけではない……。
 社会っていうのはそういうものだ。
 いろいろあると思う。

 過去の話である。
 下世話な話になるが、実はマリオにはポリーンという恋人がいた。
 そう、Nintendo Switchの『スーパーマリオオデッセイ』に登場している彼女だ。
 「えーっ」て思うだろうけど事実だ。

 そもそもマリオの初登場は1981年のアーケードゲーム『ドンキーコング』。
 そのときコングにさらわれた恋人を助けるため奮闘したキャラが後のマリオだ。
 ただ当初は名無しのプレーヤーキャラでジャンプマンなどと呼ばれていて、 マリオという名前がついたのはその続編の『ドンキーコングJr.』以降。
 これ、レトロゲーマーなら周知の事実。それなりの人が知ってると思う。
 ……知ってるかな? まあいいや、知っているヨ。

 そして、このときの恋人の名前は「レディ」。
 今の時代からするとなんじゃそりゃって話だけど、この時代はそんな乱雑さは当たり前、とにかく「レディ」。
 この「レディ」がいろいろあって後に「ポリーン」と名前をつけられたわけ。
 だから「レディ」=「ポリーン」。
 この部分を知ってる人はゲーマーでも少ないかもしれない。
 整理すると「マリオの恋人」=「名無し時代のキャラの恋人」=「レディ」=「ポリーン」となる。
 三段を超えた四段論法、合ってるね。


――『ドンキーコング』より

 当時どうだったのかっていうと『ドンキーコング』でマリオが救出に成功するとふたりの間にハートマークが出るから、これはもちろん相思相愛確定。


――『ドンキーコング』より

 で、このふたりが別れたのは、実は『スーパーマリオブラザーズ』の前後だったらしい。
 そして、マリオはピーチ姫と「いい仲」(に見える)ようになっていく。
 そんな、スポットあたりまくりのマリオとは逆に、全然目立たなかったポリーンだが、近年『スーパーマリオオデッセイ』で大活躍しているという噂を耳にした。
 え、何事? と思って、デザインを見ると……。


――『スーパーマリオ オデッセイ』のポリーン

 む。見た目はずいぶんイメージ変わっちゃったね。
 髪が赤毛になってる。
 ピンクのワンピースは真っ赤なドレスに。
 さらに全力で「Jump Up, Super Star!」なんてノリノリのかっこいい歌を歌う。
 どことなく『アナと雪の女王』を彷彿とさせる展開だ。エルサがドレスアップして「レリゴーレリゴー」。つまり、変貌したポリーンが……まぁ、テーマソングの曲調は全然違うけど。
 いや、それはともかく。
 ポリーンの話だ。見た目も行動も問題ない。
 髪くらい染めるし、服も似合うものにして、歌だって歌うさ。
 ゲームやってないから具体的にどんなキャラになってるのかはわかんないんだけど。

 でも、気になったのが、なんだか知らないけど「ニュードンク・シティ」という都市の市長になってるってこと。
 これって、かなりの大出世ではないか。
え、そんなキャラだったの?
 そうか、確かに初登場時の姿からしてい、ぱっと見、上品なお嬢様っぽい雰囲気はあった。
 それに『マリオvsドンキーコング2ミニミニ大行進!』では、マリオが建設したテーマパークのパーティーに招かれてやってくる(そしてドンキーコングにさらわれる)ということから、やはりどこかしら名のある令嬢の可能性が高いと想像できる。
 とすると、市長になるというのも割かし自然な流れだったのかもしれない。とはいうものの……そこまでにどんなドラマがあったのか。
 別れてからのポリーンはマリオを「友だち」として認識し、そう振る舞っているようだ。
 ポリーンは『オデッセイ』で、またもさらわれたピーチ姫を助けに行くマリオに協力している。
 しかし、実のところ、内心どう思っているかはわからないなとか思ったりもする。
たとえばテーマソングの歌詞の「ジャンプウィズミー」だの「アイルビーユアワンナップガール」なんてところは「え、それってピーチ姫っていうよりポリーン自身のことでは?」なんて思ってしまったりするわけ。
また彼女はマリオにいろいろな依頼をするらしいが、それもマリオを一時的に足止めして、間接的にピーチ姫救助を遅らせようという意図があったかもしれない。
 そのあたり『オデッセイ』で何かしらの情報が提示されていたのか?
 プレーしてみないとわからない。『Switch』が欲しい。

 そもそも彼らはなぜ別れたのか。
 『スーパーマリオブラザーズ』までに何があったのか。
 一部、制作者の間では、もしかしたらマリオがピーチ姫を見て気が移ったのではないか、などという推測もされていたという話も聞いたが、真相は定かではない。

 ただ、僕がもしかしたら……と思うのは『ドンキーコングJr.』でのことだ。
 なんと、このときマリオはコングを捕獲した挙げ句、救出に来たコングの子どもを虐待していた。
 報復のためか、あるいは正義感ゆえの行動か、はたまた密漁なのかはわからないけれど、どちらにしろ世間体はよくない。
 そのあたりの心の狭さ、または主義主張の違いにポリーンは嫌気がさしたかもしれない。
 だとすれば、ポリーンがマリオから離れていくきっかけになりうる。


――『ドンキーコングJr.』より

【マリオ 】「さらわれて不快な思いをした君のため、コングを捕獲することにした!」
【ポリーン】「ちょっ……あのときのことはもういいの! だからそんなひどいことしないで!」

 こうしてもめたのではないか?
 でも、マリオが硬直思考だ。あまりスマートじゃない。
 それとも、

【ポリーン】「Oh マリオ! 私のためにあのコングを捕獲して!」
【マリオ 】「Yes ポリーン! まかせとけ!」

【マリオ 】「Sorry ポリーン! 捕獲失敗しちまったよ!」
【ポリーン】「No マリオ! あなたって口だけね!」

 みたいなことになっていて……あれ、そんなひどいキャラ? そうじゃないと思いたい。
 あるいはこうか?

【マリオ 】「今度は大仕事だ。大猿を捕まえる……君をさらったあのコングだ」
【ポリーン】「え……そんな……」
【マリオ 】「仕方ないんだ……●●には逆らえない……」

 ん?? 思いついたから書いたけど●●って何?
 ハリウッド映画だとありそうな展開だけど……まあこれもないか?

 それともだ、もっとばっさり考えてみる。
 ポリーンが本格的に政界に打って出るために恋愛を捨てる決意をしたなんてこともありうるではないか。
 それでマリオが振られたという。
 いや、マリオもいい大人だ、彼女の意志を尊重して、いい別れ方をしたのかもしれない。
 ああ、泣けるじゃないか。お互い好きなのにね。

 と、待て待て。
 いや、そういうことじゃないかもしれない。
 前提が間違っているかもしれない。
 思い出してみよう。ポリーンはコングにさらわれたのだ。
 それって、大変なことだぞ?
 あんな巨大なゴリラに捕まれたまま、遥か地上百メートルまで連れていかれてるんだから。


――『ドンキーコング』より

 彼女はそれがトラウマになってしまい、日常生活に支障を来すようになってしまった。
 きっと治療に長い年月と金銭を費やしたことだろう。
 そうだとすると、もしや、マリオは彼女の治療費を稼ぐために必死にコインを集めていたのだろうか?
 いやいや『スーパーマリオブラザーズ』では、ピーチ姫救出中の出来事だから、いくらなんでも不謹慎……結果、100枚集めて自らの1UPに使っていたし、これは違うか。


――『スーパーマリオブラザーズ』より

 そうだ、初代『マリオブラザーズ』か!
 コインを集める理由は不明だった……つまり、あのときから既にマリオは金策に励んでいた。


――『マリオブラザーズ』より

 ルイージも一緒になって集めてたけど……む? そういえばルイージは兄のその事情を知ってたのか?

【ルイージ】「兄さん、次の現場、僕も行くよ」
【マリオ 】「危険だぞ、凶暴なカメやカニやハエがいるって話だ。それにウィル・オー・ウィスプに氷、なんといってもツララ……信じられないことに命の保証がない」
【ルイージ】「でも、コインがたくさん手に入るって。ポリーンさんのために……!」
【マリオ 】「ルイージ……」

 はー、泣けるじゃないか。そういうことか。
 それでなんとか、まとまった金が手に入って……ポリーンは社会復帰できたということなのかな。

 はっ。
 いやいや。ここまで来て、すごいこと思いついた。
 姫だ。
 ピーチ姫からの圧力があったのでは!
 ピーチ姫救出の後、ピーチ姫はマリオに惚れてしまった。
 そのため、ポリーンに手を引かせようとして金を渡した。
 「今後マリオに近寄るな」と。

 いや、姫ではなく王国かもしれない。
 側近の中にこの状況を利用しようと考えた者が現れたならばどうか。
 国民の求心力を得るためにマリオを救国の英雄として祭り上げることにしたのだ。
 そして、英雄のイメージ向上のため、ポリーンを遠ざけようと金を渡した。
 「今後マリオに近寄るな」と。

 どちらにしても、ポリーンは身を引いた。
 いや、金のためではない。
 逆らえないと悟ったからだ。
 でも、金は必要だった。
 政界に飛び込むために。
 目的は、そのとき心に刻み込んだ「何か」を行なうため、実権を得ること。
 そして、ついに彼女は市長になった。
 
 そう考えると辻褄が合う。
 ぴったり合う。
 なんてことだ。そんな裏があったとは。
 だが、困ったことに証拠はない。
 事実が解明されるのは、任天堂からあと何十タイトルかマリオ関連のゲームが出た後だろう。
 特にピーチ姫の思惑と、ポリーンの出方に注意を払いながら、しばらくは様子を見るしかない。


 ……いや、なんか、違う気も、しなくもない。
 根本的に。
 だから、確認するためにも……『Switch』欲しいな。

一覧に戻る

ページの先頭へ