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ゲームライフ・ゲーム

亜麻矢幹のエンタメコンテンツ

人世一夜の日登美荘
第2話
登場!爆裂プリンセス! [#10]


「では、ちょっと失礼……えいっ」
 シャイニング・レディがジャスティーダの背中をどんと押し、ジャスティーダはよろめきながらシャドーの前に躍り出た。
「囮を頼みます」
「囮!? 俺が!?」
 シャドーはジャスティーダをキッと睨んだ。
「なんじゃ、恐れをなして命乞いでもするつもりであるか?」
「えーと、まあ、なんというか……そうした方がよさそうなら、乗ってみようかなぁと思ったりしている」
「そうか、やっと己の罪深さに気がついたか。しかし無駄じゃ。わらわはそなたの無礼をけっして許さぬのじゃ。邪姫丸、今度こそ奴に直撃をくらわせてしまうのじゃ!」
「うえー、邪姫丸は疲れてしまったですみゃ」
「頑張れ、ここが正念場ぞ!」
「うー、わかりました。頑張ってみるですみゃ」
 邪姫丸が深く大きく息を吸い込み、攻撃の準備を始めたとき、ゆっくりとシャドーの死角に回り込んでいたシャイニング・レディが、一気にシャドーとの間合いを詰めた。
「えい! 捕まえた!」
 シャイニング・レディは邪姫丸を持っているシャドーの腕を背後からつかんだ。
「な、何をするっ、放せ、放すのじゃ!」
「このような危険な真似をしてはいけません! おとなしくなさい!」
「この魔法が危険なことは承知しておる! だからこそ、お仕置きとして有効なのであろろうが! 無礼であるぞ! 放せ、放せ、放せ、放せー!」
 シャドーはシャイニング・レディの手を振りほどこうとしてジタバタと暴れた。
「みゃー、やめて、姫様、振り回さないでー」
 邪姫丸が懇願する。
「文句はこやつに言うのじゃ! こやつのせいなのじゃ!」
「みゅみゅぅ……ぶんぶんされると集中できません……それに気持ち悪くなってきたですみゃ」
「ジャスティーダ! ボーッとしてないであなたも手伝いなさい!」
「お!? おおっ、そうだった!」
 シャイニング・レディに怒鳴られてジャスティーダは気を取り直し、乱闘中の3人(?)に向かって走り寄った。とにかくシャドーから邪姫丸を奪い取ってしまえば、なんとかなるに違いない。
 だが、そのとき派手に振り回されていた邪姫丸は目を回しかけていた。彼女は力なく呻くとジャスティーダの突進と同時に溜めていたエネルギー波を放ってしまった。
「うぷっ、もうダメですみゃぁぁ……んぱあぁぁ……」
「おわあああああ!?」
 ジャスティーダは咄嗟にのけ反った。太く輝く光の束が、彼の頭部があった空間を通過していく。レーザー光は先ほどのようにビルの壁を真っ黒く焼いた。チャージ途中で威力が弱かったためもあり、貫通こそしなかったが、ジャスティーダがまともにくらっていたら、いったいどうなっていたことか。大けがか、それとも生きるために必要な部位は吹き飛んでいたかたもしれない。ぶるりと震えるジャスティーダ。
「あ、危なかった」
「うわぁ、こりゃ、怖いわぁ」
 シャイニング・レディも素直な感想を漏らした。
「何をしておるのだ、邪姫丸! きちんと狙わぬか!」
「おぇぇぇー……だって……ぶんぶんされて……頭がくらくらしみゃす」
「邪姫丸、頑張れ、反撃するのじゃー!」
「ううぅー……反撃……ですみゃー」
 邪姫丸は健気に主に従い、カパッと口を開ける。
「ジャスティーダ! さっさと取り上げてしまいなさい!」
「ええい、わかっている!」
 シャイニング・レディに叱咤され、ジャスティーダはそのままシャドーに向けて手を伸ばした。
「こんの……無礼者どもがー!」
 シャドーは邪姫丸を奪われまいと必死に抵抗した。その結果、振り回された邪姫丸の頭とジャスティーダの頭が派手にぶつかった。ゴチンと大きな音がした。
「ぶぎゃ! きゅうぅぅぅ……」
 その衝撃で邪姫丸は気絶してしまった。硬化しているとはいえ邪姫丸は生身である。一方、ジャスティーダはそれなりの強度を保つヘルメットのおかげでたいしてダメージはなかった。
「邪姫丸!? しっかりせよ!?」
「よしよし、よくやりました! 頑張りましたね!」
 とシャイニング・レディ。
「お、おお。予定外だったが……結果オーライ、チャンスだな!」
 ジャスティーダの言葉にシャドーは慌てた。
「ふ、ふたりがかりでかかってくるなんて、とっても卑怯じゃぞ」
「今さら何を言っているのですか、あなたは」
「そうとも! だいたい、そっちだってふたりいるじゃないか!」
「じゃ、邪姫丸は今は伸びてしまっておるから、わらわ独りきりであるぞ!」
「言い訳無用!」
 ジャスティーダはシャドーに向けてびしっと指を指した。
「おまえは、さっき俺たちにお仕置きをするなどと言っていたが、俺も悪い子にはお仕置きをする必要があると思うぞ」
「ひっ」
 ジャスティーダは拳を振り上げた。後ずさりしようとしたシャドーだが、シャイニング・レディにしっかりとつかまれていて、まったく動けなかった。
「いくぞ!」
「……! ちょっ……!?」
 ジャスティーダの攻撃を察知したシャイニング・レディは、シャドーの腕を放してさっと脇に退いた。間髪入れず、ジャスティーダが必殺技を放った。
「ジャスティス・ブレイク!」
「うっひわわわあぁっ……!」
 激しい閃光と衝撃波はシャドーと邪姫丸を舞い上げて遥か彼方へと飛ばしていった。
「お……想像以上に派手に飛んでった」
 天を仰いでつぶやいているジャスティーダの横に、シャイニング・レディが歩み寄って文句を言う。
「私に一声かけてから攻撃しなさい! 危ないでしょう!」
「悪い悪い、チャンスだったから、つい、な……。だが、これで商店街の危機は回避されたのだから許せ」
「なんてわがままな」
「しかし、あいつ、すごく怒ってたなぁ。どうして俺たちにつっかかってきたんだろう? 何も怒らせるようなことをした覚えはないんだが」
「本当ですか? あなたが何か失礼なことをしていたのではありませんか?」
「嘘なものか。おまえこそどうなんだ」
「もちろん私も心当たりは一切ありません」
「ふむ、では、やはり彼女の勘違いだったのだろう。きちんと確認してからにしてほしいものだ」
「本当ですね」
 一瞬の沈黙の後、ふたりは見つめ合った。そこでジャスティーダは思い出した。もともと、彼らは戦っていたのだった。そこにあのちん入者が現れ、本来の目的からずれてしまった。
「……ご挨拶の品がボロボロです」
 シャイニング・レディがぶっきらぼうにつぶやいた。周囲には瓦礫がれきに混ざって、どろどろになったタオルが散らばっていた。
「これでは任務は果たせません。私たちは撤収します。ごあいさつはまた次の機会にします」
「……その方がいいだろうな」
 シャイニング・レディが宣言すると、それまで様子を見守っていた戦闘員たちが次々と現れて並んだ。
「ジャスティーダ、いずれ必ず決着をっ」
 シャイニング・レディが背を向けて颯爽さっそうと歩き出す。その後を戦闘員たちもふらつきながらも続いた。意外としっかりしてる組織だなとジャスティーダは思った。だが、とにかく悪の脅威は去った。商店街の平和は守られたのである。
「結果オーライ、正義は勝つ! では、人々よっ、さらばだ!」
 ジャスティーダは勝利のポーズを決めると、素早く立ち去った。丁度、騒ぎが一段落いちだんらくしたと見た街の人々が集まってくるところであった。
「ああっ、逃げた! 破壊するだけ破壊して、あいつら全員逃げたぞー!」



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