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ゲームライフ・ゲーム

亜麻矢幹のエンタメコンテンツ

人世一夜の日登美荘
第4話
分別ふんべつなき分別ぶんべつ [#8]


 その後、拉致されていた回収業者の人たちは全員解放され、ゴミ袋はすべて回収された。日常が戻った。ありがたい事である。
 3日後の朝、再び溜まっていたゴミを袋に詰め込んだ日之本が部屋を出ると、まほとしもべが、またもや大量のゴミ袋をかついで部屋から出てくるところだった。
「またたくさん出たね」
「溜め込んだつもりはないのじゃがなぁ」
「ごはんは残さないように食べたのですが」
 首をひねるまほたちだが、そのゴミのほとんどは食品のパッケージだった。激しい戦闘で疲れ果てたふたりはエネルギー摂取に必死になり、結果、かなりのドカ食いをしてしまったのだった。ともかく、日之本たちはそろってゴミ袋を引きずりながら集積所に向かい「せーの」で袋を積んだ。
 そこに綾乃が歩いてきて小さなゴミ袋をそっと捨てる。まほが感心した。
「まこと、園川殿のゴミはエレガントであるのぉ。どうすればそのように少なくすむのじゃな」
「え、えーと」
 袋の体積にして十倍ほども違う。綾乃にしてみれば、逆にどうすればこんなにたくさんゴミを出せるかが不思議なのだろう。
「本日はどんなものを捨てておるのじゃ?」
 気になったまほは、綾乃の捨てたゴミ袋を拾い上げると躊躇無く結び目を解いて袋を開けた。性懲りもなく……という言葉がぴったりだ。
「相変わらずかわいいピンクのティッシュ、そして長くつややかな髪の毛」
「ニンジンのしっぽ、レタスの芯、トマトのへた、ジャガイモの皮もあります……おそらく見た目麗しいサラダではと……」
「ラベルがあるの。なになに、町枝きなこ豚……おお、メインディッシュはお肉であったようじゃな」
「なんとお目が高いことでしょう。それと卵の殻に、ひ・き・わ・り・なっと」
「ひゃあ!?」
 綾乃が頓狂な声を上げた。献立がほぼ丸わかりである。プライバシーも何もあったもんじゃない。日之本はそっぽを向いて聞いていないふりをした。
「あっ、これ……」
 と、しもべの声が低くなる。
「おや、この前の不思議な小袋か……なぜ、また入っておるのじゃ?」
 それを聞いて、突然、綾乃の顔がまっ赤に染まった。
「この前、しもべたちが分別ぶんべつしたときに捨て損ねた……ということでしょうか」
「そういえばそうじゃったかな……で、園川殿、これはなんなのじゃ?」
「あ、い、いえ、いえっ……」
 ついつい挙動不審になってしまう綾乃だが、まほとしもべは追究し続けた。もちろん悪意は何もない。
「なんじゃ、何を慌てておる?」
「よくわかりません……ここは日之本うじに確認していただきましょう」
「ひっ!?」
「日之本殿、見てくりゃれ、園川殿がこんなものを捨てようとしておってな」
 まほが日之本に小袋を見せようとした。
「ひゃあぁ、み、見ないでください!!」
 綾乃は絶叫すると、日之本の手をつかみ、渾身の力を振り絞って振り回すと投げ飛ばした。日之本は頭からゴミ袋の上に倒れ、袋に埋もれてしまった。
「ぶっわぁぁぁ!」
 まほとしもべがたじろぐ横で、綾乃は鼻息荒く言った。
「み、みなさん、分別ふんべつを……つけてくださいっ!」



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