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ゲームライフ・ゲーム

亜麻矢幹のエンタメコンテンツ

人世一夜の日登美荘
第5話
Lead or Die [#12]


 日之本とまほとしもべは3人並んでよろよろしながら帰路に就いた。アイベリーはというと、ポケットの中からそっと顔を出し、終始ジト目で日之本たちを見ていた。日登美荘に着くと綾乃も帰ってきたところで、同じく疲れた顔をしていた。早々に別れてもよかったのだが、全員に奇妙な連帯感があり、日之本はみんなを部屋に招き入れた。部屋の中に入るとまほとしもべはどさりと座り込んだ。疲労困憊という言葉がとても似合う。4人はそれぞれ、深くため息をついた。
「今日は大変でしたね」
「むぉぉ、まったく大変な一日であったぞよ」
「まったくです。気がついたら、火がボーボーでびっくりでした」
 久松書店はしばらく休業する事になってしまった。おかげで日之本はアルバイト先を探さなければいけなくなった。しかも、アルバイト代がもらえるかいまいち不明である。本来なら働いた2日分の給料をもらえるはずだが店は半壊してしまったのだから。小柴や冨永も気がかりではある。日之本が最後に見かけた小柴の姿はとても憐れだった。小柴は虚ろな目で声を揺らし、冨永にばしばしと頬を叩かれていた。
「あの、気を落とさないでくださいね」
 物思いにふけっていた日之本に綾乃が話しかける。日之本は
「あはは、ちょっと波乱に満ちた一日だったなとは思いますが、まあ、大丈夫ですよ」
「日之本さんに迷惑かけたくはなかったんですけれども」
「そんな……大家さんが悪い事したわけではありませんし……」
「そう言ってもらえると……救われはしますかね……」
 罰が悪そうにもごもごと口ごもる綾乃だった。
「とにかく、みんな無事だったんだ。それでよしとしようよ」
「そうじゃな」
「そうですね」
「しかし、働き始めてせっかくコツをつかんだところだったのじゃがな。リーダーにももっとわらわの成長っぷりを見てもらいたかったというのに」
「はは……もうリーダーはいいよ」
 日之本は今日の出来事を反芻する。とてもリーダーとしてうまく振る舞えたとは思えなかった。仕事の最中もだが、特に戦闘中においてはひたすら動揺して右往左往していただけではなかったか。思い起こすと、あの非常事態の中、真っ先にリーダーシップを発揮したのはシャイニング・レディだった。腐っても悪の組織の幹部、リーダーの役割を理解している。それは認めざるをえなかった。日之本が小さく唸ると、綾乃が首をかしげた。
「どうかしましたか?」
「もしかしたら、悪の組織のリーダーっていうのも大変なのかもって思って」
「え」
 突然の告白に驚く綾乃。
「考えてみれば、あれだけの人数の戦闘員の指揮をするんだし、優秀じゃないと務まらないよな……って」
「え、えっ……な、何をいきなり」
「そうとも! 日之本殿は何を言っておるのじゃ! わらわたちはあの連中のせいでひどい目に遭っておるのじゃぞ!? それを擁護するなどと」
 端で聞いていたまほは激高した。
「でも、火事になったのはあのシャドーと邪姫丸が暴れて火を放ったからなんだしさ」
「あれはわざとではないぞよ……むぉっ、ごほんごほん……と思うぞよ」
「……私たちは自身を擁護しなければなりません」
 まほは勢いをそがれ、しもべは独り言で軽く突っ込みを入れる。
「あの混乱の中、シャイニング・レディが臆さず的確に指揮を執ったから、みんな無事に避難できたんだ。あいつのおかげだよ」
「それはそうかもしれぬが……」
 まほは口を尖らせ、ずっと下を向いて黙り込んでいた綾乃を覗き込む。
「どうしたのじゃ、園川殿?」
「疲れが噴き出たのではありませんか?」
 と、しもべも心配する。
「いえ、そ、それほどでは」
 顔を上げた綾乃の顔は赤らんでいた。
「ああ、そうだ、お茶でも入れるよ……といってもインスタントコーヒーしかないんだけど」
「あ……それだったら、私が用意しましょうか」
「え、いいですよ……そんな」
「みんなお疲れでしょう? いいんです、私は……ちょっと元気出ましたから」
 いつになく押しの強い綾乃だった。
「そうですか? では、お願いします」
 綾乃がキッチンに行こうとして立ち上がった時、はずみで傍に置いてあった日之本のデイパックが倒れて中身が外に飛び出た。
「きゃっ、ごめんなさい……」
「うわっ!」
 日之本は慌てた。ジャスティス・スーツを見られたら大変である。だが、幸いなことに外に出たのは本一冊だけだった。
「すみません、本が……あ」
 と謝った綾野だったが、本に目を落として、そのまま固まってしまった。
「むぉぉぉっ!?」
 横から覗き込んだまほの顔が歪んだ。
「『MOGITATE』? これは……何の本ですか?」
 しもべがひょーんと手を伸ばして本を手に取る。それは慌ただしかったせいで返し損ねてしまったあの本であった。女性陣の顔が真っ赤に染まる。綾乃は羞恥で。まほは怒りで。しもべは興に入って。日之本だけが青ざめる。
「ち、違う、違うんだ! これはうっかり返し損ね……というか、そもそもここにあること自体、間違いでっ……」
 日之本は必死に弁明した。だが、女性陣の耳にはいっさい届いていなかった。
「こ、この水着……何事ぞ!? エ、エ、エレガントとはほど遠いではないか! やはり日之本殿は毒されておった! すべて、あの本屋とエッチな女のせいであるな!」
「これはなかなかのもの……」
「あ、あのっ……えっとっ……あー……」
「違うんだーっ!」



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